オーダーメード?しかも家庭用ではなく、割高な店舗用?そんな予算は、どこにもないのだが……と得る私を、建築士は浅草・合羽橋の業務用家具の店に連れて行ってくれたのだ。今回の大規模修繕の設計監理をお願いしている建築士は、店舗設計などをメインにしている人なので、内装家具を安く調達することは右手のものなのである。イメージは漠然とあるけれど、品物のスペックも材質も決まっていない状態で、建築士がどのように相見積もりを成立させるのか、そのノウハウを、私はまさに傍らで見学させてもらったことになる。
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店頭で、建築士はお店の人と相談しながら布地見本を開き、その場で漠然とした漫画のようなものを描いて行く。現場でテーブルの脚のカタログを見せて貰って、その場で構想を固め、見積もりを依頼するのだ。なんだか安直な、出たとこ勝負みたいな感じである。私たちが想像する建築士の仕事とは、もっと厳粛で思索的なイメージだ。フラッと入って行った店頭でサラサラ描いた漫画の注文では、なんだか印象とかけ離れている。ま、それでも、きっとこんなやり方で良いのだろう。合羽橋の計三店で、スツール四脚とテーブル二台の見積もりを依頼したところ、結果は、安い方から二八万七〇〇〇円、二九万六八九八円、四六万一一〇〇円となった。一社だけは飛び抜けて高いので、これは即、除外である。残りの二社から一社を選ぶのだが、一番安い業者は、全額前払いが条件だ。建築士が電話を掛けて確かめてみたが、条件の変更は不可、値引きもしないということだ。